赤松林太郎さんの爽やかな朝の挨拶から本日のTOKIAがスタート。会場の形や採光に合わせて選曲をしてくださったという赤松さんの一曲目は、音の刺繍をお楽しみくださいと、優しく温かみあるクープランが風を縫っていきました。次いで、ノアンでの安らぎから生まれたのではないか、とショパンのバラード。優美でありながら徐々に高まる繊細な感情も感じました。
世界の中の日本人のアイデンティティ、とのお話から、武満徹とメシアンを繋いだ『雨の樹』。響き渡る音と、消えゆく残響のあとにくる美しい静寂を堪能しました。ハ短調はシリアス風なだけではなく苦しく困難を伴う、とショパンのノクターンへ。鍵盤が重たくなったかのような苦渋の音が聴こえ、最後はピアソラ。アルゼンチンの貧困や、タンゴを変えまいとする周囲との闘いについてや曲の背景について触れ、これまで美麗な音色だったピアノが、汗と埃と酒の染みついた場末の酒場ピアノへと変貌!赤黒い炎のような熱演に、お客さまからの熱い拍手が鳴り止みませんでした。
MCの中の、音楽が世界を平和にするなんてとても言えないけれど、そう願っています、とのお話がとても印象的でした。演奏後には、(生の音楽の場の中にある)静寂を楽しんでいただけていたら幸いです、大きな音だけではなく「引き算」が大切ですから、と、まっすぐ目を見ておっしゃいました。
(レポート◎寿すばる)
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